矯正歯科専門開業医の全国組織である矯正歯科医会(正式名称:一般社団法人 日本臨床矯正歯科医会、会長:平木建史)は、8月8日の『歯並びの日』に向け、2010年7月、全国の10代~50代の男女計1,000名を対象に、歯並びと矯正歯科治療に関する意識調査を実施しました。
調査の結果から、歯並びが笑顔や第一印象に与える影響の大きさや、多くの人が自分の歯並びを気にしていることが分かりました。その一方で、歯並びについて歯科医に相談したケースは少なく、矯正歯科治療への理解も十分でないことが明らかになっています。
異性について「整った顔立ち」と「素敵な笑顔」のどちらに魅力を感じるかを聞いたところ、68.1%の人が「素敵な笑顔」と回答(図1)。男女・各年代の全ての層で同様の傾向が見られました。 想定する異性が恋愛相手の場合と、結婚相手の場合では、「素敵な笑顔」を重視する割合は恋愛相手58.0%・結婚相手76.6%と大きく差があります。
図1 さらに、どのような笑顔を「素敵な笑顔」と感じるかについて、異性の「歯を見せた笑顔」と「歯を見せない笑顔」を比較したところ、78.2%が「歯を見せた笑顔」と回答しました(図2)。
また、76.4%の人が「歯並びで第一印象が左右される」」
※と回答しており、異性に限らず、歯並びが印象を分けるポイントとなっています(図3)。
図2 図3 歯並びが印象を左右するなか、自分自身の歯並びについても関心は高いようです。「自分の歯並びを気にしたことがある」
※と回答した人は66.5%に上りました。また、43.8%の人が「自分の歯並びを良いと思わない」
※と回答し、31.5%の人は「歯を見せて笑うことに抵抗を感じる」
※と回答していることから、歯並びへの自信は低く、笑顔のコミュニケーションを阻害していると考えられます。
しかし、「美しい歯並びを手に入れたい」
※との回答が62.3%に上る一方で、「歯並びについて歯科医に相談したことがある」
※と回答した人は24.8%に止まりました。
歯並びへの関心の高さに反して、矯正歯科治療への理解は不足
他者や自分の歯並びに対して関心が高い一方で、矯正歯科治療に対する理解は不足しています。矯正歯科治療に関する知識について質問したところ、「歯ぐきが健康ならば、何歳でも治療ができる」ことの認知度がわずか18.2%に止まるなど、各項目で「知らない」と回答した人が多数を占めました(図4)。
矯正歯科治療による歯の健康面への影響についても、「虫歯になりにくくなる」・「歯周病になりにくくなる」・「将来まで歯が残りやすくなる」の項目で認知度は3割程度に止まりました。歯並びが悪いと、磨き残しや、唾液のめぐりの悪さにより、虫歯や歯周病のリスクが高まります。厚生労働省などが推進する「8020運動」でも、歯並びの良さと歯の残存本数について関係性が指摘されています。
また、矯正歯科治療の費用については、「医療費控除を受けられる場合がある」・「保険がきく場合がある」の項目で8割以上が「知らない」と回答しました。咀嚼機能の改善などを主目的とした矯正歯科治療は医療費控除の対象となります。顎(アゴ)の外科的手術を伴う治療や、奇形などによる不正咬合の治療は、都道府県から指定を受けた医院で保険が適用されています。
図4
さらに、「矯正歯科治療のみを専門に行っている歯科医院がある」ことも6割以上に知られておらず、矯正歯科の専門性についても十分に認知されているとは言えません。
矯正歯科は、歯だけでなく顎(アゴ)の状態も考慮し、歯並びと咬み合わせを治療する専門性の高い歯科領域です。
実際に治療を受けた患者さんの認識も同様で、今回の調査対象者で矯正歯科治療を過去に受けた経験がある方(96人)のうち70.8%が「矯正歯科治療は、歯科の中で専門性が高い治療だと思う」」
※と回答しています(図5)。
図5